育て方が悪かった 親を謝らせることは出来るのか
アダルトチルドレンの方のカウンセリングをしていると、「今までのことを親に謝って欲しい」という言葉をよく聞きます。
これは、今までの親の子供に対する態度について、親に反省をしてもらい謝罪してもらいたいという、気持ちの表れだと思いますが、はたして可能なことなのでしょうか。
まず、どうやって親に謝罪をさせるつもりなのでしょうか?
謝罪をさせるということは、「お前が悪い」ということを認めさせようとする態度です。
すなわち、自分が今生き辛いのは、父母の育児態度の問題からこうなった、謝罪しろと相手を責めるわけですから、責められた父母がそれを認めて謝るかどうか・・・。
自分の生き辛さと親子関係、育児態度の関係を論じて親の気持ちが動くかどうか疑問です。
その理由を下に紹介します。
まず、親もまたその親から同じような育てられ方をされた可能性が高いということです。
もし、そうなら親の言い分としては「自分もそうして育てられた、なのにお前はどうしてそれが出来ない、耐えられないのか」となります。
人は自分を規準として物事判断します。自分が基準ということは自分が正しいということです。
ですから、子供の言うことに聞く耳もたないのです。
次に親の精神的問題として子供を私物化していることがあげられます。
私物化とは自分の持ち物として扱っているわけですから、持ち物が自分に逆らうことは考えられないということです。
子供は自分の意志を持ち意志に基づく行動をしてはいけないのです。
親子関係は1対1の人間関係ではないのです。
親としての自負。子供を自分が育ててきたという親の自負があります。
これは、アダルトチルドレンの親に限らず、大概の親はこの自負を持っているのではないでしょうか。
親は親で子供を育てるために、経済の維持、家の維持等のため大変な苦労と努力をしてきました。
そこに、いきなり子供の方から、自分の生き辛さと親子関係を論じられても、訳が分からず、また親の自負心を傷つけるものになりかねません。
また仮に親も自分の息子、娘が生き辛さを抱えているのを知っており、何か自分の育児態度に問題があったと思っていたとしても、子供が正面きって自分の生き辛さと親子関係を論じてきたとしたら、親も守りに入り、子供を攻撃してくると思います。これも親の自負です。また、人は自分が非難されていると感知すると自動的に守りに入るものなのです。
いずれにせよ、親を謝らせるということは極めて難しいのです。
でも、ここで考えてみましょう。
仮に親が謝ったとして、あなたの人生変わるのでしょうか?
あなたの人生の豊かさにつながるのでしょうか。
親が過去のあなたに対する態度を謝ったとしたら、親子関係の問題が改善されるという効果を期待されるのかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか?
親が仮に謝ったとしたら、親が自分の非を認めたことになります。
ということは、あなたは自分が正しいという認識を持つわけです。
ここに自分は正しく、親は間違っているという図式が成立するのです。
もし、この式を常に振り回したとしたらどうでしょう。
「親は間違っていた」「自分は正しい」常にそう思い、そういう態度で接することになるのではないでしょうか。
もしそうなら、これはパワ-ゲ-ムです。
いずれ親の逆襲もあるでしょう。
お互い理解し合うことなく延々と争いを繰り返すことにもなりかねません。
親を謝らせる。
本当に必要なことですか?
私は言いませんが、よく心理カウンセラ-が「親の気持ちも考えてみたことありますか」と質問されることが多々あるようです。
その質問で、抱えている生き辛さから回復するわけでもなく、親子関係がよくなるとも思えないのですが。
でも、親は親で苦労してきたこと、また、親もアダルトチルドレンであることを考えてみると、これは、親の問題というより、アダルトチルドレンの世代間連鎖の問題であると鮮明に思えるかもしれません。
誰のせいで自分が生き辛さを抱えているのか、犯人探しはやめた方がいいでしょう。
これは、血縁の問題、世代間連鎖というシステムの問題なのです。
そして、生き辛さを抱えているのは自分の問題です。
なぜ、自分が生き辛さを抱えているのか理解することは大切です。
さらに
、理解したあとは、自分の生き辛さをしっかりと自分自身が受け入れ、自分の問題として解決していくことが大切なのです。
私たちは人を操作、変えることは出来ません。
変えられるのは自分だけです。
では、ここで疑問です。
自分が変われば親も変わるのでしょうか?
次回はこのテ-マで書きたいと思います。