親の養育批判追及のリスク
私は心理カウンセラーとして、クライエントの方の、子供時代の親に対する、養育批判・怒りのみの相談(話しを聴く)は、受け賜わっていません。
これは、親に対する怒りを、心理カウンセラーにぶちまけること意味しています。
もちろん、カウンセリングでは過去を振り返り、整理ことも多々あります。
その中で、親に対する今までの思い、悲しみ、怒りが出てくることもあります。
それは、カウンセリングの流れの中でのことですので、問題はないと考えます。
問題はカウンセリングの時間中、子供時の話しと、親に対する批判と怒りだけの相談(話し)です。
最初から、それが目的の相談。
この相談内容(話し)は、自分の生き辛さ(社会不適応、性格等)の原因は、親の養育の結果であり、親が悪いという、根本的な思いが、その心に在ります。
さて、なぜ、この相談を受け賜わっていないか?
その理由は、リスクの高さからです。
基本的に心理カウンセリングは、クライエントの方の話しを傾聴、受容してお話しをお伺いいたします。
しかし、親に対する養育批判をすべて受容して聞いていると、クライエントの方は自己の主張(親に対する批判、怒り、親の責任)を、心理カウンセラーが認め、自分が正しいという思いを強化、それが親に対する攻撃心を増すことにつながらないか、このことが心配なのです。
心理カウンセラーが認めたことを、親に直接言い放ち、親を追い詰めるのではいか。
心理カウンセリングとは誤解が生じる、曖昧な世界でもあります。
それは、心理カウンセリングの基本の「受容」にあります。
「受容」とは、「共感」に基づくものであり、クライエントの方の親に対する批判、怒りを、心理カウンセラーが受けとめるものですが、これは、受けとめてはいますが、賛成しているわけではありません。
しかし、クライエントの方は、自分の話しを心理カウンセラーから反対されることもなく、その結果、自分の親に対しての思いが、心理カウンセラーに支持されていると、誤解されるかもしれないのです。
子供が親に対する批判、怒りのみの話しを、カウンセラーが「受容」する。
先のリスクを考えると、私には出来ません。
いずれにせよ、カウンセラーが親に対する批判、怒りを容認し、それを機に、さらに親に対する怒りがヒートアップ、実際の攻撃(罵倒、暴力)につがることを、私は恐れているのです。
現在私は、子供時の親に対する養育批判、怒りのカウンセリングは受け賜わりませんと断言しています。
したがって、この種の相談を受け賜わることはありませんが、
もし、受け賜わることがあるとすれば、カウンセリングの最後に
「お気持ちは良く分かります。でも、親に対する怒りはなるべく手放すことを考え、自分に専念することを考えましょう」。
と結ぶでしょう。
親に対する怒りの気持ちは、本当によく分かります。
この親じゃなければ・・・。
この思いも強いことでしょう。
人生返せ、この野郎とか・・・・
でも、親に対する攻撃は賛成出来ません。
私も親に対する怒りは、凄まじいエネルギーを持っていました。
でも、親に対して攻撃はしなかった。
ずっと制御していました。
その代わり、ふすまは穴だらけ。
怒りのエネルギーは強烈です。
しかし、一線を超えてはならないのです。
カウンセリングとは、悩まれている方のありのままを受け入れること。
当たり前のように言われています。
しかし、その先にリスクがあることを考えることも大切なことです。