不安と依存と攻撃と
恋愛依存症の破滅へのサイクル
恋愛相談のカウンセリングをしていると恋人にしがみついてしまい、どうにもならないという相談をよく受けます。
例えばA子さんはこう訴えます。
「彼は月の半分以上出張に行きます。出張中はメールをたくさん打つのですが返事があまり返ってきません。
私はこれだけ彼のことを思っているのに、彼は私のことをどう思っているのでしょうか」
と怒って訴えてきました。
この相談で明確にしなければならないこと。
「メールをたくさん打つ」このたくさんの数量についてです。
A子さんに確認したところ「仕事が終わったと思われる19時より1時間おきに深夜まで打ち続ける」のだそうです。
皆さんは、このA子さんの「19時以降1時間おきにメールを打つ」ことをどう思いますか。
なぜ、そんなにも打つのか確認してみました。
答えは「常に彼の存在を感じていたいから」だそうです。
A子さんは現在派遣で働いており17時には仕事が終わり18時30分には帰宅します。
これといった趣味もなく、帰宅後は彼のことしか考えられないそうです。そして、いつも自分はこれだけ彼のことを思っていると話されるのでした。
では、問題の本質に入っていきたいと思います。
- A子さんは1時間おきに深夜までメールを打つが彼からの返信があまり返ってこない。
- このことに対して彼を責めている。怒っている。
- A子さんは常に彼のことを考えており、それだけ彼のことを思っている。愛していると捉えている。
1.一時間おきに深夜までメールを打つことですが、これは彼の返信が欲しい、存在を感じていたいからの行動でしょうが、実際どうなのでしょう。
出張ともなれば商談後のお付き合いもあるかもしれません、一杯飲んでいるかもしれません。
これも仕事のうちです。
また、疲れて眠っているかもしれません。
要は自分が彼とつながっていたい、それを確認するのは彼女の自由でありますが、まったく相手の立場・状況を考えていません。
それに深夜までメールを打ち続けるのは常軌を逸しています。
2.そして、彼から返信が来ないことに彼を責める。
自分が返信が欲しいというのは彼女の期待です。
そして、彼がその期待を満たさないからといって彼を責める。人間の相互関係においては、お互いがお互いの期待、要求を満たしてこそ円滑な人間関係が築けるものです、A子さんは彼の期待を満たしているのでしょうか。
自分だけの期待や要求を一方的に押し付けるのならば自分勝手としかいいようがありません。
3.A子さんは常に彼のことを考えており、それは彼を愛しているからと捉えている。
確かにそうでしょう。
しかし次の見方も出来ます。いつも彼のことしか考えられないというのは、愛しているというより彼にしがみついていること。
A子さんの場合、愛=しがみつきです。
では、なぜこうなってしまうのでしょう。
攻撃→依存→不安のサイクルから考えてみましょう。
-
- 攻撃。
A子さんが彼から返信メールが来ないことを怒っていることです。
- 攻撃。
-
- 依存。
A子さんは彼とつながっていることをいつでも、どこでも確認したくてメールを深夜まで打ち続けます。なぜ、そこまで確認したがるのでしょう。考えられることは自分が自分とつながっていないこと。だから、恋人や他人に必要以上につながっていることを確認したいのです。自己存在の確実性を他人に依存しています。
- 依存。
- 不安。
自分が自分とつながっていない。これは自己信頼感欠如。自己不信。自己受容が出来ていないことを指します。これをイメージとして書きますと。「大地に立っています。しかし、自分を信頼していないので地に足がつかない、浮いたように立っているのです。その浮いた隙間にあるのが不安です」ですから、その浮いた分を他人や恋人によって補おうとするのです。大地に安定して立っていないので、人にしがみつくことにより安定を図るのです。そして、大地に立っているという言葉は、自分の人生を生きているとも置き換えることが出来ると思います。
ですから、不安、不安感が強いとそれを補うべく他人や恋人に自己存在の確実性を依存して、相手が自分の確実性を保証する行動を取ってくれないと、また、不安感(見捨てられるのではという不安)が増して、意地でも自分の方を向かせよう(過剰な要求と期待の発生)と攻撃的になってしまうのです。
これはA子さんのみならず、多くの恋愛依存症に共通する心理と思います。
では、A子さんに心の根源的問題は何か。もう、お分かりの通り、自分が自分とつながっていないところからくる不安です。ですから、サイクルは 不安→依存→攻撃となるのです。
そして、この場合のカウンセリングは最終的にはA子さんが自分と自分がつながることを目指して進んでいくのです。
自分の人生を自分に正直に生きることです。
さて、最後に不安と依存ですが、依存が人以外の他の何かに向かうこともあります。アルコール・薬物・仕事・ギャンブル等です。
アルコール・薬物の場合は不安感を和らげようとこれらに向かいます。
すなわち感覚の麻痺を図ります。仕事・ギゃンブルは打ち込むこと、熱中すること、(ギャンブルの場合過剰な興奮による快感もあります)で不安感を和らげます。
しかし、いずれにせよ最終的に訪れるのは自己破壊です。アルコール・薬物について結果は分かりきっています。
過剰な仕事は体を壊します。ギャンブルは負け続けると、経済的損失・自己破産へと進むでしょう。
そして、恋愛依存症の場合は相手に必要以上にまとわりついた結果、相手よりうとんじられ嫌われ、一番恐れていた結果を招いてしまうのです。
見捨てられるのです。
見捨てられたことにより心はボロボロになり、自己破壊・崩壊へと進んでしまうのです。
自分の存在や価値を他人に依存しないこと。
本当に大切なことです。