絶望・失望は人の暖かさを受け取りにくい

私たちは何らかの希望、夢を持ち、志を抱き前に向かって人生を切り開いて行こうとする傾向があります。
それは、希望、夢、志が人の生きる原動力となっているからです。
その希望、夢、志は人様々ですので、枚挙にいとまがありません。

しかし、人が希望、夢、志を失った時、それは絶望、失望の状態となります。

漢字の組み合わせの通り、望みを絶たれる、望みを失う、心の状態となるのです。

人は絶望、失望の状態に陥ると、どのような心理、行動の傾向があるのでしょうか。

1 自己憐憫による悲しみと怒り
2 意欲の低下 他者からの心配等、受け入れる余裕がない
3 自暴自棄による生活破綻
4 セルフネグレクト・ひきこもる
5 人生の復活・再生へのために

1 自己憐憫による悲しみと怒り

人は絶望、失望の心理状態に置かれますと、他者との比較も入る場合もあり、なぜ、自分だけがこんな目に合うのだろうと、悲しみ怒りを感じる時もあるのではないでしょうか。
そして、人によっては、自分の置かれた状態、状況を受け入れがたく、自分の希望が絶たれたことに対して、他者や社会に怒り、憎しみの感情を抱く、心理状態になることもあるでしょう。

本当は自分の失敗は、甘い計画の実行と行動により、希望を失ったにも関わらず、失敗の原因を他者の責任として(責任転嫁)、筋違いの怒りを、その方にぶちまけるかもしれません。
(責任転嫁の例として、あの時、リスクに対するアドバイスが不十分であった等)。

また、避けがたい事情(今の時勢における、新型コロナウィルスの蔓延)により、計画の挫折、順調に推移していた事業の減速、廃業等、このような時も、やはり、「なぜ、理不尽な」と、やりきれない思いと、どこにぶつけていいのか分からない、漫然とした怒りの感情もわいてくると思います。

悲しみと怒りは、心理面においてはセットであることが多く、この時期は自分の置かれた自分の状態、状況を受け入れ難い側面もあり、人によっては他者、社会に対する攻撃性が増す可能性があります。

このやりきれない攻撃性の心理状態では、他者からの思いやりのある言葉、アドバイスも受け入れがたいでしょう。

そして、絶望、失望の初期は、悲しみと怒りの感情、この感情に交互に襲われ続けますが、やがては、諦めの心境に達してしまうかもしれません。

2 意欲の低下 他者からの心配等、受け入れる余裕がない

絶望、失望の当初は悲しみと怒りに満ち、混乱していた心も、やがては落ち着きはじめます。
この時、再チャレンジ、もう一度人生やりなおそうと、エネルギーが回復してくればいいのですが、人によっては、活動エネルギー、意欲の低下を招いてしまいます。

活動エネルギー、意欲の低下は、生きる気力の低下とも、言葉を換えることが出来ます。
この心理状態になりますと、「どうせ自分は等」、自分が自分を見捨てる気持ちが生じ出し、常に気持ちが自分の内側(諦めな気持ち)に向きはじめ、「もう、どうでもいいや」等、投げやりな気持ちも芽生えはじめ、他者からの心配や、話しを受け入れる気にすらならない状態になる時もあります。
そして、同時に「他人に自分の苦しみが分かるものか」と、自分の殻にこもり出すこともあるのです。

思考も絶望・失望への事態を防げなかった、自分に対する反省の連続であり、自己価値も低下していき、食欲不振、体を動かすことも辛くなりはじめ、やがて「うつ病」、[不安神経症」等を患ってしまうかもしれません。

そして、絶望、失望の心理の恐ろしさは、意欲の低下だけではなく、逆に「もう、どうにでもなれ」の気持ちから、自暴自棄、もしくは、消えてしまいたい心理へと進行するかもしれません。

自暴自棄、消えてしまいたい気持ちはともに、自己削除の心理が根底にあり、行動の違いだけであり、心理的動機は同じです。

3 自暴自棄による生活破綻

怒り、悲しみ、諦めの気持ちの後、「人生最後は好き放題してやれ」と投げやりな気持ちから、ギャンブル、酒、ドラッグ、風俗等に借金をしてまで、お金をつぎこみはじめ、自暴自棄、また、それに伴う快楽への逃避、心の苦痛の緩和の効果を得るため、捨てばちな生活をはじめる方もおられると思います。

自暴自棄より得るものはありません。
人生、生活、健康の破綻、自己破産等への道を一直線に進みかねません。

それでも、行くとこまで行ってしまった後、ふと、我に返り、もう一度、人生やり直そう、絶望、失望からの立ち直りを見出す方もおられるでしょう。

理由は、好き放題、気の済むまで徹底的に行った後、開き直りの心理変化です。
一度失った人生の希望はまだ持てないけど、「もう一度、生きてもいいかな?」
と思えれば、また、道は開けるのではないでしょうか。

但し、アルコール依存や、薬物中毒等に陥った場合は、治療も必要となり、再発リスクも高く、「健全な自分に戻りたい」という気持ちとは裏腹に、再び、闇へと足を引っ張られる欲望とも闘わなければならないでしょう。

自暴自棄とは、積極的な自己破壊なのです。

4 セルフネグレクト・ひきこもる

自分で自分を無視する心理です。
例えば、風呂に入らない、掃除をしない、食事を摂らない、衛生面、健康を無視した生活です。
穏やかに、消えてしまいたい願望を満たす行動、心理です。

また、自暴自棄が積極的な自己破壊に対して、セルフネグレクトは人知れず、静かに、自己破壊への道を歩んでいる気がします。

自分を無視するセルフネグレトの心理には、怒り、悲しみ、諦めの気持ちが混在、そして、生きる気力の低下の結果、生じるのでないかと考えます。

セルフネグレクトは、具体的には「ひきこもり」という現象を生じ、社会からも消えた存在となってしまうのです。
大変、危険で生命に直結する、重大な問題でもあります。
もちろん、人生の主役はその本人、社会と線を引き、ひきこもり、生涯を終える決意を固められ、それを実行する権利はその人にあるでしょう。

しかし、セルフネグレトによる、栄養不良の脳(食事をとらない)でまともな判断は出来るでしょうか?

5 人生の復活と再生へのために

絶望、失望の状態に陥った人は、怒り、悲しみ、諦め、自暴自棄等の気持ちから、自己中心的な悲観的思考が優先し、「誰にも自分の気持ちは分からない等」勝手に決めつけ、人からの思いやりのある言葉、心配、優しさ、アドバイスを受け取れる心理状態でない時が多々あります。

本当は、こういう時こそ、人の話しを聞き、人生の復活と再興の道を模索すべきなのですが・・・。

今まで自分自身を賭けてきた夢、希望、志が潰えた、放心した心理状態では、まともな思考、行動、対応が出来ないことも十分理解出来ます。

しかし、どれだけ、絶望、失望の気持ちが強かろうと、人生は続くのです。
今までの夢、希望、志を追うことは、事情によっては、もう出来ないかもしれません。
でも、人生はまだ続くのです。

そして生きるためには、やはり他者の支援、応援、暖かい言葉、励ましが、生きる希望となるのではないでしょうか。
他者の言葉を落ち着いて聞ける状態になった時、また、新しい何かがスタートするのではないでしょうか。

絶望、失望の心理状態では心に響かなかった、受け取れなかった他者の言葉も、徐々に落ちついてくれば、また、置かれた状況が変われば、心に響くこともあるでしょう。

人生の復活と再興のためには、他者の言葉、そして、知恵を受け取ること。
これが、これからの、生きる力となるのです。

そして、もちろん、今までの努力と経験も活かせることでしょう。

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